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サイコロに死す お題【未来を決めるサイコロ】
「さぁ、今日はどうしようかなぁ」
私はサイコロを振る。
今日は2番か。
私はスマホで2番の男へと連絡をする。
そして、2番好みの服装や化粧をしてデートへと出掛ける。
今日は2番とデート。昨日は6番だった。
私は男をサイコロで決める。1番〜6番まで居る男たちに合わせた自分を演じてやる。それがとても楽しくて、優越感に浸れる。
私にとって男はサイコロゲームの様だ。
手の上でコロコロと転がすのが楽しい。
そう思って過ごしてきたのに……
1番の男を本気で好きになってしまったのだ。
頭が混乱した。みんなただのゲームだったのに。何で、何で。
今日はそんな1番とのデートだ。
「大事な話がある」
そう1番からLINEが来た。
大事な話?もしかしたら他に男がいるのがバレたのか?
彼の好みに合わせたベージュのワンピースにブラックのカーディガンを羽織る。
ドキドキしながら部屋で彼を待っていた。
コン!コン!
弾んだ心で扉を開けた。
目の前に居たのは〝5番〟だった。
「え……何で」
「お前他に男いるだろ?」
胸をドンと強く叩かれ、床へと倒れ込む。
「な、何で?」
「お前が寝てる時に盗聴器を付けた。」
「盗聴器?!」
「俺は5番なんだろ?俺は小さな時から何でも1番だったのに……何で5番目なんだよ!!」
「しょうがないじゃない!5番目なんだから!」
「俺を馬鹿にしやがって!殺してやる!お前の好きなサイコロで刺す回数を決めてやる!」
ギラリと光るナイフを出した5番は、机にあるサイコロを掴み投げる。
〝6〟
「決まったな、6回刺してやる」
「1回!2回!」
背中に激しい痛みが走り抜ける。
こ、殺される……
「やめろ!!」
扉の閉まる音がしたすぐ後に、1番大好きな男の声が脳内に響く。
1番が私に覆い被さってくる。
「お前も殺す!3回!4回!」
血飛沫が上がり、天井を赤く汚す。
いやだ、死なないで!
私は最後の力を振り絞り、今度は1番を庇うように抱き締める。
周りにはたくさんの血溜まりが出来ている。
5番の顔は返り血で染まっていて、余計に不気味だ。
「5回!6回!おしまい!」
生温い海に寝転ぶとバタンと扉が閉まる音が響いた。何回刺されたか分からないぐらい、もう、感覚も、目も、霞んで見えない。
体が、耳が、ドクドクしている。
大好きな彼の温もりだけは感じる。
「ご、ごめんな……お、遅くなって……」
「向こうで……幸せに……なろうな」
閉じていく瞼……
血塗れの青白い薬指には儚い光が、キラキラと輝く。
end
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