24人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
「それで、昨日はどうだったの。大宮っていう人たちは」
布団を定位置に戻して、空は興味なさげに尋ねた。
部屋のストーブはまた切れてしまったので、外ほどではないがかなり寒い。紅南はもう一回ストーブをつけ直して、目宮さんが寒くないように――と昨日の行動を繰り返す。
「見つからなかったんだぁ」
「は?」
紅南ののんきな発言に、空は怪訝な声を上げた。今やこの程度なら物ともしない紅南は、マイペースを崩さないでバッグの中を漁っている。
「外に行ったときはもういなくてね」
「それでノコノコ帰ってきたってわけ?」
「だって、家に残ってたかもしれないじゃん」
「でも実際はいなかったんだから……あぁ」
家に残っていないことは確認したけど、再出発しようにもできなくなったってわけか。誰かが妙な様子を見せたせいで。
そう言葉にはしなかったが、空は一応彼女の行動を理解した。紅南も彼の納得を肌で感じ、「それでねぇ」と言って、バッグからスマホを引っ張り出す。
「それ、魔法ってやつ」
「魔法? ……スマホ? スマートフォンって意味だねぇ。今度使い方教えよっか」
「……その、すまーとほんが何なの」
「やっぱり、仁奈たちは家に帰ってたみたいなんだぁ」
ほらっと仁奈からのメールを見せるも、空は読む様子もなく首をかしげてしまったので、紅南はその文書を読み上げなければならなかった。
「『連絡もせずごめんなさい。おばあちゃんが一人家にいて心配だから、おじいちゃんと帰ることになりました。明日また戻るから、心配しないでちょうだい』……ってさ」
「何それ」
「連絡見てなくって、夜になって気づいたんだぁ」
「言いたいことが多すぎるよ」
「そう言われても」
紅南と空はしばし見つめ合い、相手が口を開くのを待った。決着は着かず、同じタイミングで目を逸らす。
窓の外、色付いてきた村の中に、人影はまだ見えない。
最初のコメントを投稿しよう!