十六話-朝

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「それで、昨日はどうだったの。大宮っていう人たちは」  布団を定位置に戻して、空は興味なさげに尋ねた。  部屋のストーブはまた切れてしまったので、外ほどではないがかなり寒い。紅南はもう一回ストーブをつけ直して、目宮さんが寒くないように――と昨日の行動を繰り返す。 「見つからなかったんだぁ」 「は?」  紅南ののんきな発言に、空は怪訝な声を上げた。今やこの程度なら物ともしない紅南は、マイペースを崩さないでバッグの中を漁っている。 「外に行ったときはもういなくてね」 「それでノコノコ帰ってきたってわけ?」 「だって、家に残ってたかもしれないじゃん」 「でも実際はいなかったんだから……あぁ」  家に残っていないことは確認したけど、再出発しようにもできなくなったってわけか。誰かが妙な様子を見せたせいで。  そう言葉にはしなかったが、空は一応彼女の行動を理解した。紅南も彼の納得を肌で感じ、「それでねぇ」と言って、バッグからスマホを引っ張り出す。 「それ、魔法ってやつ」 「魔法? ……スマホ? スマートフォンって意味だねぇ。今度使い方教えよっか」 「……その、すまーとほんが何なの」 「やっぱり、仁奈たちは家に帰ってたみたいなんだぁ」  ほらっと仁奈からのメールを見せるも、空は読む様子もなく首をかしげてしまったので、紅南はその文書を読み上げなければならなかった。 「『連絡もせずごめんなさい。おばあちゃんが一人家にいて心配だから、おじいちゃんと帰ることになりました。明日また戻るから、心配しないでちょうだい』……ってさ」 「何それ」 「連絡見てなくって、夜になって気づいたんだぁ」 「言いたいことが多すぎるよ」 「そう言われても」  紅南と空はしばし見つめ合い、相手が口を開くのを待った。決着は着かず、同じタイミングで目を逸らす。  窓の外、色付いてきた村の中に、人影はまだ見えない。
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