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「え?」
「それではまた」
「ちょっと待――!」
紅南は屋根の縁まで行きそうになって慌てて定位置に戻った。見つかってしまうのは面倒である。
「この下……」
代わりに、紅南は反対側まで移動する。人目につかないようにしながら目宮さんが眠っている部屋へと駆けた。そして、部屋の状態が見えるや否や、床が抜けるほどの力を解き放つ。
「お前は……!?」
紅南は、そう言った化物と目宮さんの間に陣取る。
――この部屋は、血の匂いしてない。
そう判断できてしまうくらいには、紅南はこの情勢に慣れつつあった。
警戒を緩めず腹式呼吸を完了させて、紅南は目の前の見知らぬ化物に尋問した。
「何しにここに来たの? お話なら私が聞く」
「話だぁ? バカ言うんじゃねーよ嬢ちゃん。わかってるだろ? 厄介な危険因子は始末するって」
紅南は返答に衝撃を受けることができなかった。同時に、理解することも尚できない。
微動だにしない紅南に、化物は苛つきを見せる。
「そこどけ嬢ちゃん」
「どかない。帰って。お願い」
「なぁ、俺は手柄を立てなきゃならない。ぼすのお気に入りの嬢ちゃんにはわかんないかもしれないけどな。さぁどけ」
「……お気に入りって、何?」
「俺が知るか。小賢しい手を使って取り入ったんだろ? 俺は愚直に手柄で成り上がるのさ」
紅南の動きが鈍る。加えて、廊下から足音が近づいてきた。それで紅南は姿を戻さなければならなかった。
化物はそれを見逃さなかった。一瞬の好機で前に飛び出す。
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