12人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
寄せては返す波を眺めながら、いつものように砂浜でぼーっとしていたら、突然話しかけられた。
「こんにちは!」
「こんにちは」
普通に返してあれっと思って横を向いた。ね、猫? 猫が話してる。というか猫にしては身長でかくないか?
「えーと、中身人間とか?」
着ぐるみか何かだろうか。
「ねこはさかなくわえねこです」
「へ?」
意味がよくわからなかった。
「ねこはさか?」
「さかなくわえねこです」
「さかなくわえねこ?」
ねこはから始まる言葉なのかと思った。もしかしてあれか? 有名なアニメの主題歌に出てくる。
「お魚咥えた猫?」
「さかなくわえねこです」
同じ事しか言わない奴だな。というか人間じゃないのか?
こんなでかい猫見たことないぞ。いや、しゃべれるのもおかしいだろ。
「本当に猫?」
「ねこです」
いやいやいや。まさか猫族なんてものが宇宙からやってきて地球を侵略しようとか……。って考え過ぎか。俺はめんどくさくなって考えるのを放棄した。
「まあ何でもいいよ。で、何か用?」
「さかなくわえねこはさかなを咥えます」
そのまんまだな。
「魚咥えてどうすんだ?」
「お渡しします」
「へ?」
「さかな咥えてお渡しするのがねこの役目ですから」
よくわからない奴だな。
「じゃあやってみせてよ」
「はい」
その猫型の何かは、突然海に入っていった。こいつ泳げるのか? 犬じゃないのに、ねこかきなんて聞いたことないぞ。
しばらく見ていてもちっとも海から出てこない。溺れたんじゃないだろうなと心配になった頃、何かを咥えて出てきた。
「はい。どうぞ」
猫は口からペッと何か吐き出して俺の足元に落とした。紛れもなく魚だったけど死んでいる。しかも、こいつが咥えて死んだとかじゃなく、元々死んでいたような死骸だ。
「おい。なんだこれ」
「魚です」
「いやいやいやいや」
俺はため息をついた。新手のギャグか。そもそもこいつ一体何なんだ。
最初のコメントを投稿しよう!