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ですが、すぐに……あれ? いや待てよ? 俺は今日から一人暮らし始めたんだよな? ここに弟なんているはずないぞ? …と、その現実を思い出したんですね。
弟じゃなかったとしても、もちろん両親や同居してる祖父母もいるわけがありません。
じゃあ、今のはいったい…と、N君、その瞬間、全身にぞわぞわぞわぞわっと鳥肌が立って、背中に冷や水を浴びせられたかのように寒気を感じたんだそうです。
そこで、慌てて跳ね起きて電気を点けたんですが、ぐるっと部屋を見回してみても、当然、自分以外は誰もいません。
霊的なものだけじゃなく、泥棒とかの可能性も考えて玄関や窓の鍵も確認してみたんですが、どこも特に異常はない。
そうこうしてあちこち見て回っている内に、N君、だんだん落ちついてきて、こう考えるようになったんですね。
そうだよなあ。俺以外いるはずないんだよなあ……もしかして、意識してなかっただけで、本当は一人暮らしを淋しく感じていたのかもしれないなあ。それで、あんな夢を見たのかもしれない……なんだ、俺も意外と小心者だったんだなあ…と。
まあ、やっぱり引っ越しで疲れてたんでしょうね、その夜はそのまままた布団に入るとすぐに眠ってしまい、それ以上は特に何ごともなかったんですが……翌日以降も、どうにもおかしなことが続いたんです。
その部屋には、やっぱり自分の他にも何かがいる気配がしてならないんですね。
それも、夜だけじゃなく昼間もですよ。また、寝ている時だけでなく、食事をしていたり、家事をしてたり、テレビを見てたり、本を読んでたり……何かしている時にもふと、背後でそんな気配を感じるんだそうです。
それでも最初はそんな気配がするだけだったんで、彼もただの気のせいかなあ…と半信半疑だったんですがね、それが日を追うごとに、ただの気配だけじゃすまなくなっていったそうです。
ミシミシ、バキバキ…と、時々、ラップ音が聞こえるようになる……いや、時々じゃなく、やがて頻繁に聞こえるようになってくるんです。
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