何かがいる。

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 で、その原因として一番考えられるのは、やっぱりここで自殺なり殺人事件なり、何かがあった〝事故物件〟だということです。  不動産屋はそんなことぜんぜん言ってませんでしたが、事故後に住人を一人間に挟めば、法律上、告知する義務はないんですね。だから、わかっていて故意に隠している可能性だってある。  これはもう問い詰めてやらなきゃ腹の虫が収まらないという思いに駆られたN君は、すぐに不動産屋へ電話をかけて訊いてみたんです。  すいません。変なこと訊きますが……もしかしてここ、事故物件とかじゃないんですか?  そう、勢い勇んでストレートに尋ねてみたN君なんですが、すると不動産屋は、あ〜あ…と、動揺するでも、何か隠そうとするでもなく、なんというか、なんだ、またその話か…というような、どうにも意外な反応なんです。  で、その後答えてくれた不動産屋の話によりますとね、よく住人からそうしたクレームが入るようなんですが、そのアパートが建ってからというもの、ほんとにまったく、そんな事件らしい事件は起きたことがないっていうんです。  事件どころか、老人が孤独死したとか、そういう話もまったくと言ってない。いや、死人すらでたことはないんです。  じゃあ、そのアパートが建つ前に何かあったのかというと、何か建物が建ったのもそのアパートが初めてで、それ以前はなんにも使われていない、ただの荒地というか野っ原だったっていうんですね。  なのに、しょっちゅうN君のように事故物件じゃないかというクレームはくるし、OLさんみたいにすぐ出て行ってしまう住人も多い……。  だから、不動産屋も持ち主の管理会社もたいへん困惑しているそうなんです。  もし事故物件だったことを隠していたんなら文句の一つも言ってやろうと思っていたんですが、どうやら嘘は吐いていないようですし、すっかり肩透かしを食らってしまったN君は、いやあ、なんかすみません…と、逆に謝って電話を切ったそうです。  これで、事故物件でないことはわかったんですが、あの不気味な気配は確かに感じますし、時折、黒い靄のようなものも実際に目にする……じゃあ、あれはいったいなんなのか?  アパートに原因がないんだとしたら、後はやっぱり、この土地自体に何かあるとしか考えられない……。  不動産屋はただの野っ原だったって言ってましたが、もしかしたらもっと古い時代には墓地だったり、刑場だったり、あるいは古戦場だったりするかもしれない。  もう、怖いからというよりも、好奇心からと言った方がいいのかもしれませんね。
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