お礼のことば

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お礼のことば

 ありがとう、と言われた。  ぼくはとってもうれしくなった。  妹のりのちゃんがころんだので、バンソーコーをはってあげたのだ。  おばあちゃんは、いいお兄ちゃんね、ととってもほめてくれた。  ありがとうって、きもちがいい。  ありがとう、と言われた。  ぼくはとってもいやなきもちになった。  ぼくは、おふろのそうじが大キライなのに。ぼくがやるだなんて、一言も言ってないのに。  お母さんは「たっくんがやってくれるんでしょ、ありがとうね」と、めいれいしてきた。  ありがとうなのに、きぶんがわるい。  ぼくもありがとう、と言った。  お母さんと同じことをしてやった。  「お母さんがかわりにぼくのしゅくだいをやってくれるんでしょ、ありがとう!」と言った。  ぼくは、とってもしかられた。しゅくだいは、やってもらえなかった。  おかあさんも、ぼくも、とってもいやなきぶん。  ありがとうは、お礼のことば。  ありがとうは、かんしゃのことば。  人に、めいれいするためとか、しかえしするために使っちゃいけない。  そんなありがとうは、いやだ。  もっとやさしい、えがおになれるありがとうがいい。  ありがとう、と言われた。  ぼくもありがとう、と言った。 「たっくん、お皿をならべてくれてありがとう」 「お母さん、いつもおいしいごはんをありがとう」  こっちの方がずっといいね。  だからこれからも、たくさん言うんだ。  ぼくも、みんなも、幸せになれる“ありがとう”を。
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