人間椅子男 

3/15
前へ
/15ページ
次へ
商店街に新しい店が開店 どうやら古道具屋らしい ショーウィンドウを覗くと いらっしゃいませ どうぞ奥までご覧下さい 背の高い薄気味悪い男が そう言ってドアを開けた 何のお店? と尋ねる 何をお探しです? と男は逆に私に聞いた 別に何も探してないけど 珍しいものがあったら 見せてほしいわ 私は足元に置かれている 巨大な亀の甲羅や 紫水晶の塊をよけながら 奥の方へ足を進めた  中国製らしい巨大な壺や インド製の木彫りの屏風 中世ヨーロッパの甲冑 昭和時代のマネキン人形 魅力的なものは何もない ふぅ~っ ため息をつき 私はもう帰ろうと思った その時 突然 目の前に置かれていた 布張りの 大きな椅子が ガタンと動いた気がした あら? 今 この椅子 動いた? 気のせいかしら? 店の主人は 笑いもせず 気のせいではありません よく お気づきで! と 言いながら 椅子の座面を羽箒で撫で 私の目を見て こう言う おかけになってご覧なさい 座り心地が悪ければ調整します さ どうぞ 安定感ありますよ 私は 少しためらったが せっかくなので 腰かけてみた えっ! 予想をはるかに超えた心地よさ 座面の硬さも背もたれの角度も ひじ掛けの具合まで 丁度いい
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加