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商店街に新しい店が開店
どうやら古道具屋らしい
ショーウィンドウを覗くと
いらっしゃいませ
どうぞ奥までご覧下さい
背の高い薄気味悪い男が
そう言ってドアを開けた
何のお店?
と尋ねる
何をお探しです?
と男は逆に私に聞いた
別に何も探してないけど
珍しいものがあったら
見せてほしいわ
私は足元に置かれている
巨大な亀の甲羅や
紫水晶の塊をよけながら
奥の方へ足を進めた
中国製らしい巨大な壺や
インド製の木彫りの屏風
中世ヨーロッパの甲冑
昭和時代のマネキン人形
魅力的なものは何もない
ふぅ~っ ため息をつき
私はもう帰ろうと思った
その時 突然
目の前に置かれていた
布張りの 大きな椅子が
ガタンと動いた気がした
あら?
今 この椅子 動いた?
気のせいかしら?
店の主人は 笑いもせず
気のせいではありません
よく お気づきで!
と 言いながら
椅子の座面を羽箒で撫で
私の目を見て こう言う
おかけになってご覧なさい
座り心地が悪ければ調整します
さ どうぞ 安定感ありますよ
私は 少しためらったが
せっかくなので 腰かけてみた
えっ!
予想をはるかに超えた心地よさ
座面の硬さも背もたれの角度も
ひじ掛けの具合まで 丁度いい
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