人間椅子男

私は　この椅子がほしくなった
これに座って　小説を書いたら
何か　面白い発想が浮かびそう

この椅子　いくらですか？

店の主人は　少し考えてから
私に　こう質問した

あなたは　この椅子が
どんな椅子だったらいいと
期待していますか？

どんな椅子って？
そうね　例えば
江戸川乱歩の人間椅子とか？

店の主人は　少し微笑み
何となく安心したように
こう言った

なるほど
では　この椅子は
お望み通り　人間椅子です

えっ？
人間椅子なんですか？
この中に　誰か入ってるの？

ええ
男が一人　入っています
それが　ご希望なのでしょう？

彼は　私の目の前には
決して出てこないでしょうね？

ええ
人間椅子に入っている男は
職務規定上　
持ち主に姿を見せることは
決してありません

職務規定？
彼には誰が給料を支払うの？
私が支払うことになるの？

いいえ
あなたには　レンタル料を
支払っていただくだけです

レンタル料って　いくら？

１日22,000円です
中にいる男への報酬と
保険料　保守費用など
いろいろ経費が掛かるのです

いいわ
それくらいなら　使ってみる
今すぐ家まで運んでちょうだい

わかりました
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