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爺が出て行ったので
私は部屋に鍵をかけた
私は深く椅子に腰かけて
ゆったりと背もたれに体を預け
うっとり座り心地を確かめた
ひじ掛けに腕をのせる
その中に男の腕があるかと思うと
つい両手で そこを温めたくなる
私は椅子に入る仕事を選ぶ男の
身の上を あれこれ想像してみた
江戸川乱歩の人間椅子に入っている
男は 醜く 現実には気味の悪い男
実に怪しい 不気味な仕事である
相当な体力と忍耐力を必要とする
少なくとも年寄りには無理だろう
中で 急に倒れる可能性もあるし
長時間 同じ体勢で座っていたら
何かあっても急に動けないだろう
ということは 若い男だろうか?
暗闇の中で 淫靡な気配を愉しみ
小説のネタにでもするつもりか?
私の中に いたずらな心が芽生える
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