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私は 椅子の中の男を意識しながら
一方的に 男と対話を試みる
身動きできない暗闇で
見知らぬ人間の体温を 感じる
そんな不思議な仕事を選ぶ理由
何を求めて
こんな仕事をするのかしら?
例えば あなたが 男性で
女性のぬくもりを求めていると
仮定する
でも こんな分厚い布を挟み
あなたも私も
黙って座っているだけで
何がどれだけ伝わるの?
それとも その
何となくしか伝わらない歯がゆさが
あなたの快感なのかしら?
見えそうで ほぼ 見えない
聞こえそうで よく 聞こえない
体温も 重みも やわらかさも
伝わりそうで 伝わってこない
その ぼんやりとした あいまいな
手が届きそうで まるで届かない
蔑まれた 惨めな環境こそが
あなたの好奇心を満足させるのかしら
わかるわ
まるで おあつらえ向きに
何もかも用意された場所より
いろいろ 難しい条件の中で
目的を果たそうと 夢見ること
不自由で 息苦しく 不安定な
まったく落ち着かない状況下で
身勝手な 欲求と好奇心を掲げ
身をよじり 身悶えすることは
ピチピチ鮮度の高い 背徳感を
狂おしいまでに美しく演出する
最高のスパイスよね
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