シロとクロ

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 軽く扉をノックする音共に、扉の外から声が聞こえてきた。 「どーもー、デリバリースターピッツァです! お届けのピッツァですが、こちらの間違いだったようで!」  慌てたように男たちは凌と恵を黙らせようと駆け寄ってきたが、凌が恵の前に立ち、左手を自分の目の前に挙げ、右手は胸の位置に挙げる。  男たちが殴りかかってくるのを左右にいなして、恵の手を取り窓に向かって走り出した。 全開になっている窓の前で素早く凌は恵を抱き上げ、勢いをつけて飛び降りようとする直前に、扉の外に向かって凌は大きな声で言った。 「get out!」  言い終えるや否や凌は窓から外に飛び降りた。  とっさのことで通行人の確認を怠ったが、運良く通行人がいなかったタイミングだったため両足でうまく着地が出来た。  しばらく足がしびれて動けそうにもなかったが、それでも凌は恵を抱えながら、灰野と待ち合わせたビルの影に駆け込んだ。  ビルの影に走りこむと、待ち合わせ通り灰野と会うことができた。灰野は無線で仲間に何かを指示しているところだった。  肩で息をしながら、呼吸を整えている凌の肩に灰野は手を置く。 「お姫様抱えて、大変だったな」 「まあ、な」  息が整ってきたところで、凌は抱きかかえていた恵を地面に下ろす。恵は両足で地面に立つと、心配そうに凌を見る。 「大丈夫? 飛び降りたけど」  凌が少し足を引きずっているように見えるらしく、痛々しそうに見る恵。そんな恵を安心させるように、凌はぎこちない笑顔を見せる。 「問題ない。お前こそ、大丈夫か?」
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