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会計を済ませて、コンビニの入り口前で二人は落ち合い、そろって恵のアパートに向かう。道中2人は、教授のこと、講義のこと、大学入っての初めての定期試験のことなどたわいもない話をしながら並んで歩く。
しばらく歩くと、築浅のアパートが見えてきた。
都内では珍しくもなく、アパートの入り口にはオートロックがあり、恵は慣れた手つきでロックを開けた。郵便の受け箱を除いてから、階段を上がる。運良く誰にも会うことなく恵の部屋に入ることができ、ここでようやく凌は一息つくことができた。
「適当に座ってー」
1Kの部屋にしては、やや広め。キッチンは2口コンロのIHが備えついている。流し台はいつ見ても広く、きれいだ。
部屋に入ると、ベッドと机と本棚、パソコン兼テレビがあるだけだった。衣類はクローゼットにきちんと締まっているし、水回りもきれいにしているところから考えても、恵はきれい好きなのだと凌はいつも思う。
いつものごとく居心地が悪そうに、凌がどこに座るか悩んでいるうちに、恵はクローゼットから服を取り出し始める。
「もう暑いからねぇ。でも腕出していると、細くてばれそうだからなぁ」
独り言をぶつぶつ言いながら、恵は楽しそうに服を選んでいる。腕時計も男物を用意しているようで、これも楽しそうに選んでいる。
「よくそんなに男物揃えられるな」
クローゼットをちらりと見ると凌がアパートに置いてある数の3倍くらいの服があった。女性物は衣装ケースに入っているのか、ハンガーにかかっていない。
「ほとんど古着だけどねぇ。……さて、こんなものかな」
男装用の衣装を選び終わったらしく、恵はウィッグを外して、ショートカットスタイルになった。髪形を自由にいじれるからと、恵は髪を伸ばす代わりにウィッグをつけている。
「ちょっと着替えてくるな」
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