シロとクロ

18/33
前へ
/33ページ
次へ
 学生も笑顔で答えた。さっとケイが学生の前に座ったのに続き、凌もケイの隣に座る。 「そー。めっちゃかっこよかったから、ずうっと気になっていてさ」 「へぇ。これ、俺の友達がやっているアパレルのバンドなんだよね。今は知名度ってのをあげるのに配ってくれって頼まれていてさ」  そう言いながら男子大学生――峻希は黒色のトートバッグから二つバンドを取り出す。ちらりと凌は峻希を観察する。無地のTシャツに長袖のシャツを合わせている。Gパンも細身のものを穿いており、モデルのように見える。身長も凌よりもやや高めだ。筋肉質には見えないが、鍛えているようには見える。 「ブランド名、教えてくれない? このバンドかっこいいから服も見たいな」 「これからオープン予定みたいなんだよ。オープンしたら教えるから、連絡先交換しないか?」 「了解」  ズボンの後ろポケットからケイはスマホを取り出す。普段使っている恵用のスマホとは違い、ケースも色も男が使っているようなものだ。細部までこだわっているケイらしく、男装用のものは普段使いのものと区別をしている。  二人は連絡先を交換し終えると、峻希は席から立ちあがった。 「俺、これからバイトなんで、これで。オープンしたら連絡するわ」 「ありがとな」  手を振ると、峻希は店から出て行った。峻希が見えなくなるまで様子を見ていた凌は、ス峻希の姿が見えなくなるとようやく一息ついた。ケイはバンドをじっくりと見ている。 「オープン前に配るなんて、相当羽振りがよさそうなブランドだよねぇ」 「ああ」
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加