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そんな凌の心配をよそに、恵はこの仕事を一緒に続けている。彼女の将来の夢は刑事になることだ。この仕事は適性があるか自分でも見極められるためだといつも言っている。
コミュニケーション能力、行動力だけ見ても、凌は恵に適性があるように思う。しかし、仕事のためなら自分の身の危険も厭わない。
その危なっかしい考え方に凌は不安を感じることもしばしばあった。
「峻希から話を引き出せなかったら行く。引き出せるなら行かない。それで良いな」
凌の提案にケイは頷く。再びメッセージを峻希に入れるケイ。
『モデルは峻希が似合うんじゃないのかな?』
『俺は読モしてるからダメなんだよ。ケイならば身長もデザイナーの希望に近いし。やってくれたら礼もしてくれるって』
『礼?』
『ちょっとしたバイト代とちょっとしたものだって』
メッセージを凌に見せるケイ。凌は眉根をひそめながら、すぐに灰野に電話を掛ける。すぐに電話がつながり、合言葉を交わす凌。
「接触が出来そうだ。どうする?」
『してくれ』
「今回、何の事件に絡んでいる?」
『聞かない約束だったんじゃないのか?』
仕事に感情移入しないために、灰野と凌の間で取り決めした約束だった。感情移入をしてしまうような内容だったら、視野が狭くなってしまう。そうなっては灰野が欲しい情報が得られない。
視野を広く保つために凌は灰野から事情を聴かないし、灰野も凌に事情を話さないのだ。
「潜入する以上何を調べるべきかよりはっきり知りたい」
『……』
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