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しばらく黙る灰野。灰野の様子を気にしながらも、それ以上の言葉を掛けない凌。二人の間に沈黙が続く。それに耐えかねたケイは凌のスマホをひったくる。
「ねぇ、グレー。俺たちのことならば心配しないで。上手くやるから」
『……』
「危なかったらすっぱり手を引く。約束する」
真剣な声で灰野に言うケイ。その声に負けたのか、灰野はようやく口を開く。
『背後に暴力団が関係しているかもしれない事件だ』
「グレーは刑事じゃないの?」
『今回は合同捜査。俺が関わっている殺人事件の周辺でそんな話が浮上している。でも誰も真相を掴めていない。少し焦っている』
「へぇ。珍しいね」
『揶揄うな。少しでも情報を集めるために方々に頼っているところだ』
「なるほどね。で、今回俺たちの方にも来たわけだ」
『どんな情報でも正直ありがたくて、すがりたくなる』
「……そうか」
電話を取り戻した凌はケイをにらみつける。もめる状況は今までもあったし、危険になる状況もあった。
しかし今回は違う。
話を聞いてしまった以上、凌は覚悟を決めるしかなった。
「グレー、危険だとわかったらすぐに手を引く。すぐに対処してくれ」
『了解。連絡は都度。手段は問わない』
通話を切ると、ケイに目配せをする。ケイはすぐに話を聞きに行く旨を峻希に返信する。するとすぐに明日の午後2時に先ほど送られてきた住所のビルの入り口で待ち合わせするメッセージが返ってきた。
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