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その文面を見て、凌は頷き、そのままケイに目線を合わせずに黙ってカフェテリアを出た。ケイは慌てて凌の後を追う。
外は暗く斜め後ろからでは凌の表情を読み取ることができない。ケイは歩くスピードを速めて凌の隣に並ぶ。難しい顔をしたまま凌が歩いているのを横から見るケイは居心地の悪さを覚えて、凌に言葉を掛けられない。
駅まで坂道を歩いて15分。駅に着いたところで、ケイは沈黙に耐えられず凌に声をかける。
「悪かった。聞かないルールだったのに」
「あのまま灰野が黙って電話を切れば、俺たちが何を調べるかわからずじまい。危険かどうかを常に意識し、ちょっとでも危険だと感じたら退避できる。でも話を聞いたら視野が狭くなるし、変な安心感も生まれる。結果、退避のタイミングを逃しやすい。危険が増すばかりだ」
凌が早口で畳みかけるように言う。ケイはさらに居心地の悪さを覚え、下を向く。
「……悪かった」
「今更謝られてもな。とにかく灰野に情報は共有しておく。フォローもしてもらわないと」
凌の冷たい言い方にケイは口を閉じてしまう。凌はメールで灰野に明日の待ち合わせ場所と時間について連絡を入れる。
メールを送り、スマホをズボンの後ろポケットにしまってから、凌はケイに目を合わせずに言った。
「お前は外れろ」
冷たさを孕んだ言葉にケイは反発した。
「なんで!」
「視野が狭くなった相棒は足手まといだ。理由は何でもつけておく。お前は明日は来るな」
言い捨てるように凌は改札を通り、ホームに向かった。その背中を悔しそうな顔でケイは見送った。
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