シロとクロ

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「でも、お友達にしては年が上の人が外にいるよね?」  凌は表情を変えずに、スーツ男を見た。スーツ男の顔は真顔のままだが、口元だけが微笑んでいる。  何かあった時のために灰野に近くで待機してもらっている。凌が書けている眼鏡に仕込まれているカメラを通して、状況を確認できるので万が一の時には突入してもらう作戦だ。 「それにしても峻希も馬鹿だな。あっさりかよ」  先ほどまでの人の好さそうな様子もなくなり、急に態度が悪くなった。スーツ男はネクタイを緩めながら、一歩一歩凌に詰め寄るが、凌は一歩も下がらずに男を見る。 「調べても何も出てこないよ。俺たちは賢いからね」  凌と同じくらいの背丈のスーツ男と凌は目が合う。煙草をよく吸うのか、スーツに匂いが染み込んでおり、至近距離ではむせかえりそうになる。  調べに来ている凌を何かと勘違いしている可能性もあるが、これ以上とぼけていては危険になる。スーツ男の目は笑っていない。その目は鋭いナイフのように見える。  間違った対応は己の命の危険を招く。それを知っているだけに、凌は慎重に動かなければならない。 (グレーはそんなヘマをする人じゃない)  灰野に対する信頼。しかし、それさえも今は油断にしかならない。凌は今一度気を引き締める。 「何を調べにきたんだい?」  スーツ男の言い方も雰囲気もさっきとは違う。    視線が、言葉が、鋭い。    それだけで背筋に冷たい汗が流れる。
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