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「あー、ピザじゃなくて、ピッツァです。ピッツァ」
「うるせぇなぁ」
「でも、うちはピッツァなので」
先ほどから空気の読めていない店員は二人の男に凄まれていても、怯えることなく正面に立っている。図太い神経の持ち主なのかと凌は感心する。
(この隙に窓から飛び降りれば逃げられないこともないが)
店員を放ってここから逃げるのもはばかられる気がして、凌は動き出せずにいる。ちらりと入り口を見ると、店員は男2人とまだひと悶着やっている。
「だーかーらー、俺たちはピッツァなんて頼んでねぇの」
「ああ、やっとピッツァって言ってくれたんですねぇ。うれしい限りですぅ」
「お前、うざいんだよ!」
とうとうスーツ男がしびれを切らして、店員の帽子を跳ね上げるようにして手で払いのける。帽子を払いのけられても、店員は一歩も動かなかった。帽子を払いのけられた店の髪と顔が、帽子の下からあらわれた。肩よりも少し長めのロングヘア、ぱっちりとした大きな二重、不敵な微笑みを保っていた。
「お、女?」
男だと思っていた店員が女だということを知り、スーツ男は少なからず驚いていた。オールバック男も目を大きく開けて驚いている。
「あ、男だと思ったぁ?」
緩い口調の店員――恵は不敵に笑いながら、男二人を見ている。
「やっぱり見えるよねぇ。まぁ、どっちでも良いんだけどねぇ。さて、すこーしお兄さんたちのこと調べさせてもらいましたよ」
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