シロとクロ

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 スマホを胸ポケットから取り出して、恵は男たちに話す。 「ここのブランドは架空のもの、というかオープン予定がないですよね。モデルに向いていそうな、もとい、自分たちに都合が良さそうな人に声をかけては、変な話を持ち掛けていたみたいですね」  いら立ちを隠せないスーツ男は腕を組みながら、指で腕を叩いている。オールバック男は特に何も言わずに、恵を不審な目で見ている。 「例えば、怪しい薬とか?」  片頬をあげて、上目遣いで恵はスーツ男を見る。しびれを切らしたスーツ男は左手の甲で恵を殴り飛ばそうと手を振りかざす。  さすがの恵もその動作に動揺したようで、顔をひきつらせた。とっさに配達用の鞄で身を守ろうとしたが間に合わず、鞄ごと体を外に吹っ飛ばされた。  吹っ飛ばされた恵は応接用のソファに打ち付けられ、崩れ落ちる。 「恵!」  駆け寄ろうとした凌を制するようにスーツ男は凌を見ながら、横たわっている恵を靴で踏みにじる。 「正義の味方かなんか知らないけど、知られた以上は帰すわけにはいかないな」  気を失っているのか恵はピクリともしない。吹き飛ばされた際に打ちどころが悪かったのだろうか。 「今の時点で傷害事件成立。あんた、これ以上罪を重ねない方が良いんじゃないの?」  凌の挑発じみた発言はスーツ男に届かない。優勢な状況に浸っているスーツ男は余裕を見せている。 「別に、ここから誰も帰らなければバレないことだ」
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