5人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
スマホを胸ポケットから取り出して、恵は男たちに話す。
「ここのブランドは架空のもの、というかオープン予定がないですよね。モデルに向いていそうな、もとい、自分たちに都合が良さそうな人に声をかけては、変な話を持ち掛けていたみたいですね」
いら立ちを隠せないスーツ男は腕を組みながら、指で腕を叩いている。オールバック男は特に何も言わずに、恵を不審な目で見ている。
「例えば、怪しい薬とか?」
片頬をあげて、上目遣いで恵はスーツ男を見る。しびれを切らしたスーツ男は左手の甲で恵を殴り飛ばそうと手を振りかざす。
さすがの恵もその動作に動揺したようで、顔をひきつらせた。とっさに配達用の鞄で身を守ろうとしたが間に合わず、鞄ごと体を外に吹っ飛ばされた。
吹っ飛ばされた恵は応接用のソファに打ち付けられ、崩れ落ちる。
「恵!」
駆け寄ろうとした凌を制するようにスーツ男は凌を見ながら、横たわっている恵を靴で踏みにじる。
「正義の味方かなんか知らないけど、知られた以上は帰すわけにはいかないな」
気を失っているのか恵はピクリともしない。吹き飛ばされた際に打ちどころが悪かったのだろうか。
「今の時点で傷害事件成立。あんた、これ以上罪を重ねない方が良いんじゃないの?」
凌の挑発じみた発言はスーツ男に届かない。優勢な状況に浸っているスーツ男は余裕を見せている。
「別に、ここから誰も帰らなければバレないことだ」
最初のコメントを投稿しよう!