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ケイは困ったように笑いながら、掴まれていない手で茶色に染めた髪をいじっている女子大生を見る。
黒色のノースリーブタイプのニット、やや短めの茶色のフレアスカート、シックなピンク色のピンヒール。おしゃれに分類されそうなその女子大生は、数日前に凌のいとこである灰野正義から捜索依頼を受けた目的の人物だった。
灰野は現役の刑事であり、いろいろなタイプの情報屋を駆使して事件を解決している。ケイが凌から聞いた話によれば、警視庁の中でもかなり優秀な人らしく、いくつもの事件を解決しているらしい。
今回の女子大生がどのような事件に関係しているか凌にもケイにも知らされていないが、間違いなく灰野の担当事件に関係していることだけは分かる。
二人はそれ以上詳しい話を聞かない。
二人はただ頼まれたことを淡々とこなし、情報料と称した小遣いを灰野からもらうだけだ。
「ケイ、新宿駅前のいつものカフェで引き渡したら、完了だ」
落ち着いた口調で凌はケイに声をかけると、ようやくケイは警戒心丸出しの雰囲気を少しだけ緩めた。
少しだけ優しい雰囲気になったケイは女子大生に声をかける。
「悪いね、急に。今からちょっと会ってもらいたい人がいるから、来て」
先ほどケイにすごまれたせいか、女子大生は目を合わせようとしない。髪をもてあそびながら、彼女は不満そうに言う。
「えー、これからバイトなんだけど」
「少しで済みますから。お願いしますね」
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