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恵が打ち付けたであろう側頭部を凌はそっと左手で撫でる。たん瘤も出来ていない、切れてもいないことが確認できた凌はほっとした顔を見せた。
「痛むところはないか?」
「とっさにかばったおかげでね」
「あのスーツ男のせいで態勢まで見えなかったし、お前なかなか起きなかったからな」
「それはあれだよー、演技ってやつ?」
首を可愛らしく傾げながら、とぼけたように恵が言うと、ふっと凌も笑った。
「はいはい。お似合いコンビはとっととここの病院へ行け。俺が連絡しておくから」
灰野は病院と医師の名前が書かれたメモを凌に託すと、無線で再度仲間に連絡を取った。
「突撃隊も無事突撃出来たおかげで、逮捕出来た。お前たちのおかげだ。ありがとう」
頭を下げた灰野に、凌と恵は驚いて顔を見合わせる。
「今回ヤバかったから、危険手当が欲しいくらいだよねぇ」
「だな。上乗せ、5万かな」
「足りなくない?」
「かもな。まあ、応相談だな」
冗談交じりの2人の話を灰野は肩をすくめて手を挙げる。
「お前ら、ほんと素直じゃないな」
ぐしゃぐしゃと凌とケイの頭を乱暴に撫でる灰野。2人はじろりと灰野を見る。
「ま、無事でよかった。今回は大手柄だ。2人は事情聴取を受けるかもしれないが、偶然の出来事だと話してくれよな」
「了解」
凌は灰野を睨みつけたまま、冷たく言う。そんな凌を見ながら、灰野はケイにも声をかける。
「恵もあんまり無茶するな。相棒が心配するだろ。今後は無茶しないように」
「はぁい」
そっぽを向いたまま声だけで返事をするケイ。
「そういえば、あのタイミングで言ってくれたの、グレーだろ?」
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