シロとクロ

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「ああ、昨日クロに頼まれて5分経っても戻ってこなかったら、一芝居するっていうことになっていたんだ」  こともなげに言う灰野に、凌は驚いて恵を見る。 「だったら俺に一言あっても」 「それだったら、シロを驚かせないじゃん?」 「いや、ドッキリとかじゃなく、こういうのはちゃんと作戦を立ててだな」  呆れた凌はややとげのある声で恵に言う。 「今回1人で突っ込んだのは、シロじゃん。さすがに今回は危ないってわかってたのにさ」  ふてくされた言い草だが、恵の言っていることは間違っていない。凌はバツが悪そうに右手で頭を掻く。 「……悪かったよ」 「許す。学食ランチ2週間分で」 「なんでだよ。……でも、まあ、助かったから、それで手を打つ」 「もちろんデザート付きでね」 「いや、それは高すぎる」  学食ランチの一食あたりが400円程度、それにデザートを付けると合計で600円することもある。  さすがに凌の財布事情には厳しい状況になってしまう。  凌と恵のやり取りを見ていた灰野が、無線で誰かに声を掛けられていた。 「あー、仲が良いことですな。俺は現場に呼ばれたんで行くわ。気を付けて行けよ」  2人の様子を交互に見ながら、灰野は2人の頭から手を退けた。2人の背中を軽くたたいてから、灰野は右手をヒラヒラと振りながら、その場を離れる。  灰野が通りに出たのを見てから、凌はケイに声をかけた。 「あー、とりあえず病院の前にラーメンでも食べに行くか」 「ここはデラックスフルーツ盛り盛りパフェでしょーが」 「りょーかい」 「今回は、凌持ちだからね」 「はいはい。お前は俺にカプチーノを奢ってくれよ」 「むぅ、それは難しい相談だ」 「なんでだよ」  いつものテンポの会話に戻った二人は、並んでビルの影から通りに出た。灰野が向かった方向とは別方向に歩きながら、くだらない話をして駅に向かって行った。 完
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