5人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
らちが明かないと判断した凌は女子大生に申し訳なさそうに言う。しかし、他人からは優しく言っているように聞こえるが、有無を言わさないような雰囲気を出しているのかケイにだけわかった。
凌はケイの手から女子大生の腕を離す、優しくエスコートするようにして、彼女に歩くことを促す。未だ不満そうな顔をしながらも、女子大生は抵抗する素振りを見せずに歩きだす。
その二人の数歩後ろをケイは歩く。こちらも不満そうな顔をしているのは誰が見ても明らかだった。
五分ほど歩くと、灰野と待ち合わせのカフェに着いた。どこにでも見かけるチェーン店であり、人の出入りも多い。灰野との待ち合わせはいつもそんなカフェだ。
「よぉ」
灰野はカフェの入り口近くに立っていた。上下スーツでありながら、どこかラフな感じが漂う。180センチもの長身にスーツがフィットしているからか、刑事でなかったらモデルをしているかもしれない。そう思わせるほど、灰野は整っていた。
「グレー、お待たせ」
女子大生と並んで歩いてきた凌は左手を挙げる。
灰野を見た女子大生は、それまでの不満そうな顔から一転、急に身だしなみを気にしだした。そんな様子を凌はあきれたように見ながら、凌は女子大生の背中を右手でそっと押す。
「例の女子大生」
そっけない感じで言われるのに慣れているのか、灰野は特に気にする様子もなくにこやかに女子大生の手を優しくとる。そのしぐさは少し間違えるとホストのようにも見える。
「いきなりごめんね。ちょっと話を聞きたいんだけど」
そう言ってカフェの中にすんなり女子大生を通すと、灰野は二人に手を振った。
「いつものとこに、よろしく」
最初のコメントを投稿しよう!