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お茶を飲み干してから、凌はショルダーバッグにパソコンとテキスト、ノートを入れて席を立った。カフェテリアを出ると、外の気温が高いことに今更ながら気づく。数歩でも歩くと汗が噴き出してきた。
恵の家まで歩いて15分程度。
のんびり歩いて行けば、どこかで恵と出会うかもしれない。
男1人、女子大生の部屋の前で待つほど、凌に度胸はない。他の住人に見られたらなんて噂を立てられるかわかったものではない。
用心深いかもしれないが、恵の住んでいるアパートには同じ大学の学生が住んでいるから、余計にそう思うのかもしれない。
校門を出て、道沿いにのんびり歩いていると、後ろから軽快な足取りでやってくる音が聞こえてきた。
「凌くん」
軽く肩をたたき、にこやかな笑顔で凌を覗き見る恵。
依頼がないときの恵は普通の女子大生に見える。他人から見れば恵と凌は恋人同士に見えるかもしれないが、凌にとってそれは不本意なことだった。恵は凌の相棒なのだから、凌は恋愛感情を抱くことはない。
「飲み物、なんか買っていく?」
「そうだな。コンビニで買っていくか」
恵のアパート近くにあるコンビニに入り、二人はそれぞれ飲み物とおにぎりを買った。
灰野からの依頼メールはまだ見ていない。
何が書かれているかわからない以上、簡単に食べておくのがこれまでの経験上得策だと二人は分かっている。
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