1.りょうしりきがくてきかんそくねこ

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 それで可哀想な猫は原子が崩壊すると毒が出る残忍な箱に入れられている。一定期間経過後にその元素の状態は『50%の確率で崩壊している状態』で『50%の確率で崩壊していない状態』が重なり合っている。同じように量子力学的視点で考えると、一緒に入った猫も『50%の確率で生きている状態』で『50%の確率で死んでいる状態』が同時に重なり合っている。  でももし実際に箱に猫を入れたら、猫はミクロで微細じゃないから重なり合うなんてことはなくて、死んでいるか生きているかどっちかなんだろうけれども。  けれどもノイマン博士はやってしまったんだよ。何をどうやったかわからないけど、『重なり合い』を相対性理論上の世界に持ち込んだ。量子力学的に一定確立で存在しながら一定割合で存在しない猫型ロボット。誰かが観測したとき、確立的に存在しない場合には存在せず、確立的に存在する場合には存在する。そして量子力学的に一定時間存在したまま1日を経過した場合、2匹に増えるという機能を有した『りょうしねこ』。  世の中は混乱した。『りょうしねこ』は存在するときに観測したら存在してしまう。そうするとなにもないと思って行動していたのに他の誰かが観測したことによって突然『りょうしねこ』が存在する。歩いているときに誰かが足元の『りょうしねこ』を観測してしまったら、躓いて転ぶ。ロボットだから妙に硬くてぶつかると結構いたい。転ぶだけならまだいいけど、それが自転車でも自動車でも電車でも起こる。事故が多発する。結果的に、『りょうしねこ』が観測された地域は『りょうしねこ』警報が出て外出自粛が促された。
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