37人が本棚に入れています
本棚に追加
そして更にその数日後。
「やっぱ運悪いでしょ」
帰り際、突然、酷く心配そうな智樹に声をかけられた。
どうだったかな。気のせいだと思ってスルーしてたけど、ガチャ運は変わらず微妙な気はする。でもやっぱり運悪いっていうほどじゃないような。
それより何故智樹はこんなに心配するんだ? そっちのほうが心配だ。
「なんで? 良くはないと思ってるけど悪いというほどでも」
「いやなんでっていうか。ええと」
改めてそう問い返せば、智樹は慌てて目をそらす。
「なんかモヤるからさ。はっきり言って」
「いやでも……」
「怒んないから」
「いや、怒られる筋合いはないんだけど。……ええと、幽霊とか信じる?」
「いや別に」
「だよね……」
幽霊? その言葉は全く予想していなかったものだ。というか、幽霊がいるかいないかも真剣に考えたことはない。
「俺に幽霊がついてんの?」
「まあそう、なんかヤな雰囲気してる、家が呪われてるとかない?」
「どうだろ、幽霊って天ぷらにして食えるって聞いたことがあるんだけどそうなのかな」
「何言ってんの?」
そんな噂を誰かから聞いた気がするんだけど。あれは塩をふるといいからだっけ。天つゆをかけても幽霊って消えるのかな。
結局のところ、幽霊がいるかはよくわからないがなんだか智樹が気になる。
だからとりあえず智樹を家まで案内すると、ぽかんと口を開けてめちゃ固まった。
「なにそれ俺の家そんなやばい感じなの?」
「ぐぅ、なんでここで暮らせてるのさ」
智樹の顔がみるみるうちに青くなる。白いチューリップを青い色水につけた時みたいだ。
「え? 普通に快適に」
とりま家に入らないと話が始まらない。茶も煎れられないよね。
完全に腰が引けてる智樹をおいて、玄関を開けると声がした。
『面目ないにゃ』
あれ? なんでどげざねこ?
まだ効果範囲には入っていないと思うんだけど。
ドサリという音がして振り返ると、智樹が昏倒していた。
え、そんなに?
でも俺そこまで運が悪い実感ないんだけど。
『平に、平ににゃ~』
振り返っても誰もいない。幽霊?
ちょっとだけ考えて結論づけた。
ひょっとしてどげざねこがヤバい幽霊のストレス値を緩和していたんだろうか。だから俺に悪いことは起こらなかった?
そう考えると凄い性能?
けれどもカスタマーセンターに問い合わせても、きっと妙な目で見られるだけだろう。
とりあえず倒れた智樹をそのままにしておけなかったから家にいれたけど、そのままにしといたほうがよかったのかもしれない。起きた時阿鼻叫喚だったから。
最初のコメントを投稿しよう!