1.りょうしりきがくてきかんそくねこ

4/4
前へ
/89ページ
次へ
 これでこの騒動は終わる、そう思って祝杯を上げた時、事件が起きた。施設の電源がシャットダウンし暗闇に包まれた。大慌てで『りょうしねこ』の部屋を確認したときは既に遅く、その半数以上は逃げ出していた。  カメラの電源が落ち、誰も観測しない状態に陥った『りょうしねこ』は存在が確定しない。そして不確定な『りょうしねこ』は量子力学的重なり合い上に存在したり存在しなかったりして、『りょうしねこ』は存在が不確定な状態で施設の壁を超えて逃亡した。トンネル効果っていうやつ?  科学者は途方にくれた。次は何匹の『りょうしねこ』を捕まえなければならないのだろう。  科学者は部屋の中に落ちていた紙を何気なく手にとって絶望した。 【りょうしねこは潰えさせぬ エルヴィン・ノイマン】  量子力学的存在化した、確率論的に存在したり存在しなかったりするノイマン博士が邪魔をしている。そして現在も科学者たちは不毛に『りょうしねこ』を追っている。  ここに全人類とノイマン博士の量子力学的ねこ戦争が勃発したのであった。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加