ぱくぱくのお花

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 三角に折って戻す。三角に折って戻す。十字の線がついたら中心に向かって四つの角を真ん中で折り合わせる。これで座布団折りのでき上がり。  そうしたらまた裏返して、もう一回座布団折り。  最後に裏返して半分に折って、方向を変えてまた半分に折る。 「これで指を入れたら……はい、ぱくぱくができました!」  幼い頃、おばあちゃんが折り紙で作ってくれる「ぱくぱく」が大好きで、いろんな色でいくつも作ってもらった。指を動かすたびに、中に描いた絵や文字が変わるのが面白くて、おばあちゃんがぱくぱくするたびに歓声を上げた。  ぱくぱくは、閉じた時には桔梗の花みたいに見える。だから私はそれを「ぱくぱくのお花」と呼んでいた。 「おばあちゃん、ぱくぱくのお花してぇ」 「いいよ。今日はこれにしようか」 おばあちゃんは花びらの中に、絵だけじゃなく数字を書いてくれることもあって、日によってどれかを選んで見せてくれた。 ある日は占い。 「三番!」 「三番ね。はい。今日は忘れ物に気をつけましょう」 「えー、(さき)は忘れ物なんかしないよ」 またある日はおやつを選ぶ為に。 「八番!」 「八番か……ふむふむ。今日はホットケーキです!」 「やったあ! 当たり!」  楽しい思い出ばかりのぱくぱくのお花。だけどいつしか思い出すこともなくなっていた。
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