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○月△日 午後1時
母親と会食。某イタリアンビュッフェにて。
育児の話をふると、母親から日常生活を話し始める。以前と比べて豊かな表情が見られることから、メンタル面において何らかの変化があったと思われる。
「好き嫌いをする」「同じ絵本をせがまれる」「入学式の必要品を揃えた」などから、母親の中で娘は5~6歳程度に成長したと推定される。
自宅のカメラから
・幼児の服を着せた人形に食事を与える
(温めた人参のみが皿に乗っている)
・人形をピアノの前に座らせてラジカセから音楽を流す
(童謡のピアノ伴奏)
・人形を寝かせ、横で同じ本を読み聞かせる
といった姿が見受けられ、同時に母親が一方的に人形に話す・怒る・撫でる等の行為を行っている。
原因は未だ不明だが、2年前の母子心中と何らかの関係があると見る。
母親の記憶が戻った形跡はないが、事態が急変する恐れもある。今後は母親の容態を慎重に監視しつつ、具体的なケアを探る。
記録 〇〇〇〇○
「・・・ねぇ ママ。どうしてママのお友達は、人形を連れてきてるの?」
「いい?蒼汰。あの子のことは、ミカちゃんって呼ぶのよ。」
「え?なんで?」
「いいから ――― そう呼びなさい。」
「お待たせー―!ごめんね遅くなっちゃって!ほらミカ、ごあいさつは?あーー本当にゴメンねーー(汗)この子人見知りで・・・」
「・・・ママ・・・」
ぐでん・・・と、力なくぶら下がる人形に、蒼汰がいつもより強く腕を掴んだ。
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