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例えば、少女漫画の絵を描くとき、目は顔の半分を占める程、その大きさが重要となっている。一方の私の目は切れ長と言えば聞こえが良いが、細い狐目だ。実際の狐は結構くりっとした目をしているのに、イラストでは細く描かれているのは謎だ。私の体形は中肉中背、色黒とは言わないが色白ではないことははっきりしている。
五歳年上の姉は母譲りのくりっとした目をしているのに、わたしは細目。父に似たのだ。歩き方や仕草まで似ているらしい。それを喜ぶのは父ただ一人。
「お母さん、私、もっと可愛く生まれたかった」
別嬪と言われなかった日、家に帰ってから母に怨み節を投げかけた。母は困った様子で数十秒考えてから、こう返した。
「みいちゃんは…………、普通だよ」
うんうんと一人で頷き、夕食の支度で忙しそうな素振りを見せた母。
(普通……ってなに?)
どこかで『そんなことないよ、可愛いよ』と親の欲目で言ってくれることを密かに期待していた私は、あまりに正直な回答に傷ついた。
(私は可愛くはないのだ)
厳しい現実は小学6年生には過酷である。
私はそれからというもの、自分から見て綺麗な人、可愛い人に特別目がいき、羨望の眼差しと少しの妬みを覚えるようになった。
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