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美しい顔に生まれたかった。何度、そう思ったことか。たかだか、十二年しか生きていないのにも関わらず、私はすでに自分の顔に絶望している。世の中に存在する人間は二種類。美しい人か、それ以外だ。
「おじょうちゃん、えらいべっぴんさんやなあ。将来楽しみやなあ」
学校の帰り道、紗代ちゃんと歩いていると、道路工事をしていたおじさんに声をかけられた。声をかけられたのは紗代ちゃんだけ。そのおじさんの視界に、私は少しも入っていなかった。
紗代ちゃんは、顔を真っ赤にして早歩きで通りすぎた。呼びかけても紗代ちゃんは口をへの字にして開かなかった。紗代ちゃんが困惑していることは何となくわかったが、何に対してなのかがわからなかった。
別嬪だなんて、最高の褒め言葉だ。見向きもされなかった私からしたら、羨ましい限りだ。紗代ちゃんの将来は大人に保証されたのだ。
十歳ごろまでは容姿の違いを意識させられることはなかった。このごろは同級生の間でも、さっきのように大人たちからも、私たちは容姿に対して判定を下されることが多くなった。紗代ちゃんは目がくりっと大きくて、色白で体も華奢で小さい。守ってあげたくなるような可愛いさだ。
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