ありのままで

13/14
前へ
/283ページ
次へ
「自分を好きになるお手伝い…って言ったけどさ、私こそ自分を好きになりたかったの」 自分の部屋というパーソナルスペースの中、ぽろぽろと心に染み込んでいた思いを溢す。 「だから……ありのままのお前が好きだって言ってくれて、嬉しかった」 篠宮は「うん」と言ってワシャワシャと髪の毛を拭くと、私の顔を覗き込む。 「最初から言ってるじゃん。 俺は素のお前の方が好きだって」 そう言って、ニッと口角を上げた。 『本当は口も悪くて、いつまでもネチネチ思い続ける弱い人間ですよ』 『いいんじゃない? 俺はそっちの方が好きだけど』 初めて2人で飲んだ夜の思い出を手繰り寄せながら、あの日篠宮がくれた数々の言葉には、もっと深い優しさが込められていたんだと思うと、なんだかグッときてしまった。 篠宮に甘えたくなって、こてんと寄りかかるように彼の肩に頭を乗せると「どーしたの、なっちゃん」と、笑いながら頭をポンポンと撫でてくれた。 私と同じボディーソープの匂いがして、小さな幸せを見つけたように胸がきゅっと温かくなった。 「甘えたくなった」 「じゃあ、ずっと俺が甘やかしてあげる」 ハハッと笑った振動が肩越しに伝わってくと同時に、落ちてきた篠宮の言葉が私を優しく包み込む。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4377人が本棚に入れています
本棚に追加