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「自分を好きになるお手伝い…って言ったけどさ、私こそ自分を好きになりたかったの」
自分の部屋というパーソナルスペースの中、ぽろぽろと心に染み込んでいた思いを溢す。
「だから……ありのままのお前が好きだって言ってくれて、嬉しかった」
篠宮は「うん」と言ってワシャワシャと髪の毛を拭くと、私の顔を覗き込む。
「最初から言ってるじゃん。
俺は素のお前の方が好きだって」
そう言って、ニッと口角を上げた。
『本当は口も悪くて、いつまでもネチネチ思い続ける弱い人間ですよ』
『いいんじゃない?
俺はそっちの方が好きだけど』
初めて2人で飲んだ夜の思い出を手繰り寄せながら、あの日篠宮がくれた数々の言葉には、もっと深い優しさが込められていたんだと思うと、なんだかグッときてしまった。
篠宮に甘えたくなって、こてんと寄りかかるように彼の肩に頭を乗せると「どーしたの、なっちゃん」と、笑いながら頭をポンポンと撫でてくれた。
私と同じボディーソープの匂いがして、小さな幸せを見つけたように胸がきゅっと温かくなった。
「甘えたくなった」
「じゃあ、ずっと俺が甘やかしてあげる」
ハハッと笑った振動が肩越しに伝わってくと同時に、落ちてきた篠宮の言葉が私を優しく包み込む。
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