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ほんと、ズルい人。
悲しさに追い打ちをかけないでよ。
瞼から溢れ落ちた雫が、掌に落ちた。
だけど、言っている意味は理解できる。
聡君が私を部下として、同志として、大切に思ってくれてるのは分かる。
私にとっても、色んな事を教えてくれた、尊敬できる上司という事実は、変えられない。
私達にしか分からない絆があるのなら、"今でも大切に思われているんだからいいじゃない"って、自分を慰めるしかない。
だけどまだ、そんなの気休めにしかならない。
簡単には切り替える事が出来ない心を持て余しながらも"分かったよ"って、私は私のプライドの為に最後は笑った。
聡君は少しだけ笑みを浮かべた後、背を向けた。
パタンと閉まるドアの音。
ずっと受け止めたくなかった。
また戻ってきてほしいと思ってた。
静まり返った部屋で、込み上げる悲しさに耐えきれずに、ただひたすら泣いた。
強がりくらい言えたら良かったのにね。
終わりを受け入れると、強がりさえ言えないんだ……。
ひとしきり泣いた後、ふと窓の方へ目をやると、高層階から見えるきらびやかな街の夜景が映っていた。
真っ暗なんかじゃない。
目に映る世界はこんなにも眩しいんだって、言われているような気がした。
とてつもない悲しみに打ちひしがれた夜なのに。
残酷なくらい綺麗だった。
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