恋人ごっこ

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──お前の事分かってるんだけど? そんな風に言われているようで、泣きそうになった。 本当は皆と同じテンションでなんかいられないし、行きたくないけれど… こんな夜に1人じゃいられないんだもん。 みんな楽しそうにはしゃいで、立ち止まる私達に気づく事なくどんどん離れて行く。 心が場違いな自分を惨めに感じて、瞳が潤んでいくのが分かった。 ぐっと唇を噛んで見上げると、篠宮は"はぁ…"とこれみよがしに溜息をついて 「ヘルプを出す勇気を持てよ」 いつか聞いた事のあるセリフを言った。 目の前の篠宮。 はちきれそうな心。 こんな事、前にもあった。 「……昔、言われたね」 「覚えてた?」 「今思い出した」 篠宮は「なんだ。今かよ」と少し不満気に笑って、握っていた腕を離した。 同じ営業部で働いていた頃、私は仕事を1人で抱えていっぱいいっぱいだったのに、プライドが邪魔して人に頼る事は"負け"だと思ってた。 「抱えるより、もっと楽な方法あるだろ?」 そうだよね……。 どうして苦しい道を敢えて通ろうとするのかな。 心は、助けを求めてるのに。 あの時……。 "困ってるなら助けてほしいと口に出せ"と言われたのに、"弱くない"と見せる事に必死だった私は言えなかった。 なんかもう、強がるのもやめたいよ。 いつも自分の素直な気持ちを否定してしまう、心癖を手放したい。 「……辛いから、話聞いてよ」 ポツリと呟くと、篠宮がフッと笑った。
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