大人だから

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ニコッと無駄に可愛い顔で笑う。 目は二重で愛くるしく、少し大きめの口。 少年ぽいあどけなさがありながらも、背はスラリと高いという、お見事なギャップ。 見た目の良さと、軽い口調にたらしこまれ、寄ってくる女が後を断たない故、篠宮は社内イチ有名な遊び人。 仕事先で関わる女はだいたい関係を持ってるとか、飲み会で出会った女をすぐに捨てただとか、昔からロクな話を聞かない。 そんな篠宮の言う事を聞けだと………? 「何か仕事で出来る事あれば……」 「困ってないし。さっきから言ってるけど、俺が仕事できるの知ってるだろ?」 あぁ、もう本当に最悪なヤツに見られた。 神様、時間をお戻し下さい。 時間を戻せるなら、あと5分……! いや、江名が部署に来る前まで……いやいや、時間が戻るなら1ヶ月……もっと前? そしたら別れないように、聡君が江名に心変わりしないように頑張るのに。 「ん?どーした?」 篠宮の声で我にかえる。 …………何を考えているんだろう。 どんなに後悔しても、時間は戻らない。 また、どうしようもない虚しい現実に胸が痛む。 「……別に。で、何をすればいいの?アンタが言うと…」 「犯されそうって?来るもの拒まずなだけで、来ないものは追わないし」 つまり眼中にないと言いたいらしい。 一晩付き合えと言われても嫌だけど、不思議なもので「興味ない」と言われても、これまた魅力ないのかと微妙な気持ちになる女心。 「まー、また考えておくよ」 篠宮が意味ありげに笑った。 相変わらず、掴み所のない男だ。
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