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「思わず抱きついてしまったー」
メソメソとテーブルに突っ伏す私。
案の定、お酒が入ると号泣。
篠宮と2人で入ったバーは、近くの海浜公園を眺められるカウンター席があって、非現実的な空間を更に演出してくれていた。
「2人になると無理だった。
聡君を取り戻したい気持ちがどんどん大きくなって…」
「ふーん」
「それで大撃沈なんて、ダサすぎる…」
顔を上げて、ワインを一口飲んだ。
隣に座る篠宮は、特に何を言うわけでもなく、私の泣き言を聞いてくれる。
さっきまでは気を張っていたけれど、篠宮だと気を使わなくていいから酔っぱらえそう。
「後悔してんの?」
「いや…そうでもない」
ふぅ、とひとつ息を吐く。
「私、突然別れを言われて何も受け止められないままだったの。受け止めたくなかったって言うか…」
どうしてなの?って、分からない疑問を繰り返しては、聡君に聞く勇気も無かった日々。
「だけど、今回は聡君の気持ちが分かったから…」
またじわりと涙が浮かんで、声が詰まる。
照明を落とした薄暗い店内には、客が何組もいるけれど、落ち着いた雰囲気を壊さぬよう静かに飲んでいる。
このしっとりとした空気が、更に気持ちを曝け出して、涙を誘うのにはうってつけだ。
「あんたの言う通りだったよ。
私達は表面上うまくいってるだけだった。お互い、本音を見てみぬ振りして隠してた」
苦笑いをしながら、またワインを一口飲む。
篠宮も何も言わずに、ワインを口にする。
前みたいに言いたい放題言われるのかと思ったけれど、何も言わない。
「何か言ってよ」
「ご愁傷さまです」
「ムカつくわー」
笑いながら篠宮の方を向くと、目が合った。
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