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まぁ、篠宮は特に慰めようとか思ってないんだろうけど。
ありのままを言ってるだけ。
それって素が優しいって事だよね、なんて、うまく思考が回らない頭で篠宮をぼんやり見ていると、風がびゅうっと吹いた。
思わずぶるっと身震いすると「寒いの?」と、篠宮が目を丸くする。
いくら酔っぱらいでも、さすがに外を歩き続けていては体温が下がるらしく、ショールをぎゅっと固く結んだ。
「ほら」
肩からバサッとジャケットが掛けられて、篠宮が脱いで貸してくれたんだと分かる。
「えー!優しい!」
キャッキャとはしゃぐ私を、呆れたように見ている。
篠宮の香りがしてくすぐったい。
なんだか、安心しちゃう。
「ねぇ、また恋人ごっこしようか!」
嬉しくて、変なテンションのままこの間のバカげた制約を提案すると、篠宮がクッと笑う。
「いーよ。
ちゃんとしろよ?なっちゃん」
"お手並み拝見"とばかりに、片眉をクイッと上げる。
「当たり前でしょー!ちゃんとやるよ」
挑発を受けて立つ私は、篠宮の腕に絡まった。
大胆な事をしている自覚はある。
普段なら絶対に出来ないけど、私の甘ったれた心がお酒のせいで更に大きくなっている。
「あれ?今日は甘さが全開ですね」
「だから、ちゃんと出来るって言ったでしょ」
「へー」
「歩きやすい」
「俺の事、その辺の柱だと思ってる?」
クスクスと笑いながら、おぼつかない足許を理由に寄り添う私達。
すれ違うカップルと同じように、私達は今、恋人同士に見えているだろう。
篠宮の腕に触れた事なんてなかったけれど、意外とちゃんと筋肉質で"男"の部分をを感じてしまう。
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