胸が痛んでこそ恋

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「…風邪?」 「うーん。そうかも? 週末の肌寒い夜に、酔っ払っいに上着取られたのが原因かなー」 はっ…!!! まさかこんな所で週末の話題をぶっ込んでくるとは! ニヤリと口角を上げる篠宮は、絶対に確信犯! 「すみませんね…。ご迷惑をおかけしました」 「記憶あるんだ?」 「え?」 篠宮がじっと私を見つめる。 ヤ、ヤバい。 なんだか尋問されてるみたいな気持ちになる。 あると言えば"キスした事も覚えてる"って言ってるようなもんだし、ないと言えば完全に無かった事にできる! どうすればいい?! どうしたいの、私! 分かんない! 大 ピ ン チ !! 「いや、曖昧で」 ハハハと笑って誤魔化した。 ドギマギしている私とは逆に、篠宮は「ふーん」と涼し気な顔をしたまま、紙カップのコーヒーを飲む。 ズルいけど、最適な答えを導き出した気がするわ……。 今、これ以上突っ込まれても何も言えないし。 反応してこない篠宮にホッとして視線を送ると、いつになく真面目な顔をした彼と目が合った。 「俺は全部あるよ」 …………へ? ど、ど………どういう事………? そりゃそうでしょうよ、篠宮は酔ってなかったじゃん! "俺は忘れてませんよ"って事?! 謎かけみたいな事言うの止めてよー! さっきまでチャラチャラしてたのに、なんで急にそんな顔するのよーー! どう反応すればいいのか分からず固まっていると、篠宮はコーヒーを飲み干し立ち上がる。 かと思えば、少し屈んで私の耳元へと顔を寄せた。 「あの日は可愛かったね、なっちゃん」 耳元でコソッと囁かれた。 なんとも甘ーい、女が落ちるような声で。
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