胸が痛んでこそ恋

7/20
前へ
/283ページ
次へ
そんな気持ちを自覚してしまうと、また体が熱を帯びるようで、落ち着かせるようにアイスティーを飲み干した。 ひんやりとした液体が、体中に染み渡っていくよう。 いつもと変わらない、目の前に広がる大小ちぐはぐなビルを眺めながら、週末の夜を思い出す。 あんなに1人で過ごす夜に怯えていたのに………。 大失恋という大きな痛手を負ったにもかかわらず、奈落の底には落ちなかったのは、聡君の事ばかりを考えなかったから。 ずっと、心がざわついてる。 きっとあの夜から、私の中で"何か"が変わってしまった。 「あ、菜月さーん!おはようございます」 カフェを出てオフィスに向かっている途中、出勤した杏璃ちゃんが駆け寄って来た。 今日はセミロングの髪の毛を一つに纏めて、ピンク系のアイシャドウとリップで、柔らかく仕上げている。 キュートな杏璃ちゃんによく似合っていて、私には持ち合わせていない個性を羨ましくも思う。 「週末はごめんね。 結局体調悪くなって…。何も言わずに帰っちゃって…」 「いいんです!無理してたんでしょ?もう良くなりました?」 「うん、大丈夫。ありがとう」 杏璃ちゃんには「体調悪くて帰ります」と一応メッセージは送っていたものの後ろめたい。 二次会での出来事を聞きながら、須田君のお見事な暴れっぷりに若干引いていると「そういえば、篠宮さんも一緒でした?」と、ふいに聞かれた。 来たっ!!!
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4317人が本棚に入れています
本棚に追加