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そんな気持ちを自覚してしまうと、また体が熱を帯びるようで、落ち着かせるようにアイスティーを飲み干した。
ひんやりとした液体が、体中に染み渡っていくよう。
いつもと変わらない、目の前に広がる大小ちぐはぐなビルを眺めながら、週末の夜を思い出す。
あんなに1人で過ごす夜に怯えていたのに………。
大失恋という大きな痛手を負ったにもかかわらず、奈落の底には落ちなかったのは、聡君の事ばかりを考えなかったから。
ずっと、心がざわついてる。
きっとあの夜から、私の中で"何か"が変わってしまった。
「あ、菜月さーん!おはようございます」
カフェを出てオフィスに向かっている途中、出勤した杏璃ちゃんが駆け寄って来た。
今日はセミロングの髪の毛を一つに纏めて、ピンク系のアイシャドウとリップで、柔らかく仕上げている。
キュートな杏璃ちゃんによく似合っていて、私には持ち合わせていない個性を羨ましくも思う。
「週末はごめんね。
結局体調悪くなって…。何も言わずに帰っちゃって…」
「いいんです!無理してたんでしょ?もう良くなりました?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
杏璃ちゃんには「体調悪くて帰ります」と一応メッセージは送っていたものの後ろめたい。
二次会での出来事を聞きながら、須田君のお見事な暴れっぷりに若干引いていると「そういえば、篠宮さんも一緒でした?」と、ふいに聞かれた。
来たっ!!!
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