胸が痛んでこそ恋

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「えっ?!篠宮と?!」 「うん…」 「篠宮って、あの篠宮だよね?同期の?!」 文香に何度となく確認される。 創立記念パーティーから始まった一連の出来事を文香に話すと、最後の最後でパスタをクルクルとフォークに巻いていた手が止まった。 本日のランチパスタは明太クリームソースで、プチプチと大きな粒の明太子が入っていて、とても美味しい。 「いや!深い意味はないのよ!たぶん…」 「篠宮かぁー…」 「酔ってたし、流れでキスしちゃったというか…」 「篠宮かぁー…」 「それしか言わないな」 まぁ、そうなるよね。 この文香の微妙な反応に、キスしてしまった事がなんだか後ろめたくなってしまう。 「でも篠宮って、意外と可愛い所があったり、優しかったり……なぜだか居心地が良くて…」 それとなく、篠宮の良い所を言ってみると、文香がやっとピクリと反応した。 「そうなの?」 「まぁ…」 「へぇぇぇ、そうなんだ〜!」 めちゃくちゃニヤニヤしている。 あぁ、とてつもなく恥ずかしい。 パスタを巻くのを再開した文香は、鼻歌でも歌いそうなくらいゴキゲンに見える。 「そういう所が好きなんだねー」 「えっ!!!」 文香の一言に、今度は私がパスタを巻く手が止まってしまった。 「え、何?違うの?」 「よく分かんないのよ…」 聡君の時は、こう穏やかに… "いいな、好きだな"なんて思い始めて、その気持ちがどんどん大きくなっていったけれど…。 篠宮に対する気持ちが同じだとは思えない。
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