胸が痛んでこそ恋

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「分かんない?」 「だって聡君をまだ好きだし」 もう、聡君との事をどうこうしたいとは思ってないけれど、心にこびりついているものは仕方がない。 「そっか。昨日の今日で割り切れないよね」 「だから、私はただ篠宮に甘えてるだけなんじゃないのかな。 失恋の痛手を、篠宮で埋めてるのかもしれない」 この気持ちは、錯覚なんじゃないだろうか。 心に空いた穴を、誰かに埋めてもらうために。 「私も気持ちがよく分からないし、ましてや篠宮が何を考えてるかなんて更に分からない」 「確かに冗談しか言わないからな、アイツ!じゃあ、ダイレクトに聞いてみる? なんでキスしたのって!」 「無理無理無理!」 思わず両手で顔を覆う。 ………絶対に無理。 聞いてしまって、「特に意味ないけど」なんて言われた日には、恥ずかしくて死にたくなるだろう。 「きっと"雰囲気に流されてキスしました"が妥当なんだよ」 「まぁ、確かに。 失恋、お酒、海、夜景。見事なシチュエーション」 「でしょ…?篠宮にとっては、意味なんてなくて軽い遊びみたいなもんなんだよ。子供じゃないんだし、キスの意味なんて聞けない」 はぁ、と思わず溜息が出た。 「例え篠宮にはなくても、菜月にはあったんでしょ?」 え? 文香の方を見ると、またニヤニヤしている。 「だって、篠宮だからできたんでしょ?」 「うっ……」 「失恋の傷を埋める為なら、誰でも良かったの?そうじゃないんでしょ?」 「それは…」 「ほら、逃げずに気持ちを見つめる!」 絶対に楽しんでる! 文香の目は三日月のようになって、笑いながらグイグイ詰めてくる!
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