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やっぱり翻弄されているのなんて私1人。
あの夜の事も、篠宮の事も気にして損した!
カツカツと歩くヒールの音が、怒りのせいで心なしか大きく聞こえる。
「壱哉君って、彼女いるんでしょうかね?職場の方とお付き合いしてるとか、聞いた事あります?」
一番端を歩く有村さんが、私と杏璃ちゃんの方を向いた。
"無関係"ではない私はギクッとしてしまい、答える事に躊躇ってしまったが、杏璃ちゃんは「いや、ないですよー」とペラペラ話している。
「なんだか沢山遊んでるって聞くし…」
「あー…アハハ…」
杏璃ちゃんも「そうですよ」と言いたい所だろうけど、そこはどこまで言っていいのか躊躇ったのだろう。
苦笑いしながら、言葉を濁す。
「まぁ、だけど……。
遊んでいてもいいんです!
会っていれば、振り向いてもらえますよね?!」
有村さんは、自分に自信があるんだろうな。
篠宮を振り向かせるだけの自信もあれば、篠宮を手に入れたいという気持ちも認めてる。
「好きなんですね」
思わずポロリと呟いてしまった後、しまった!と口を塞ぎたくなってしまった。
聞きたくない言葉が耳に入ってくる事は、安易に想像出来るのに。
「はい!もう見た目もドストライクだし、
面白いし、優しいし、大好きなんですよー」
ほらね。"大好き"って。
カッコよくて、面白くて、優しいんだって。
サラッと出た言葉に、どれほどの気持ちが入っているのだろう。
私には言えないその言葉が、また気持ちをざわつかせる。
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