崩れる

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社内カフェでイチャイチャしてたのなら、噂なんて瞬く間に広がる。 「篠宮さんの事聞いた?」 「有村優希とつき合ってるんだっけ?」 「そこはただの噂だけどさ! こないだフィールに有村優希が来てたみたいで!すごくラブラブだったらしいよ」 「篠宮さんもついに落ち着くのかなー。なんだかショック」 「篠宮さんなら遊ばれてもいい!思い出にする!」 ガタッ──。 耐え切れなくなって、立ち上がる。 打ち合わせが長引いて、少し遅れて社内食堂で昼食を取っていた私の背後で、耳障りな話題がずっと繰り広げられている。 まだ休憩時間は残っているけど、ここにいるのはメンタルがやられそうで、逃げ出すように食堂を出た。 …ったく! なんで篠宮のせいで、私の休憩時間を台無しにしなくちゃなんないのよ! スマートに「お疲れ様です」なんて、廊下を笑顔で歩きながらも内心はイライラが止まらない。 かと思えば、先日の有村さんと篠宮の姿が浮かんでチクリと胸が痛む。 あー、やだやだ。 篠宮は至って"通常運転"なんだから、私が振り回されちゃいけないだけ! 悶々とした気持ちを抱えながら、久しぶりに屋上の扉を開けると、太陽の容赦ない日差しに思わず手をかざした。 一瞬、目くらましにあったような感覚になりながらも、遮る指の隙間から見えた人物のせいで鼓動が早くなる。 少しだけ、期待していたような。 会いたくなかったような。 篠宮が転落防止柵に持たれかけて、タバコを吸っていた。 ……………ん?
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