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「また社内で修羅場とか止めてよね」
そんな胸の内を隠したまま、ハハッと笑う。
お互い、目の前のビルに視線を移したまま。
最初に屋上で篠宮に会った時と変わらず空は青いし、目の前のビルの群れも変わらないし、篠宮も変わらない。
目に見えるものは、何も変わらない。
「気をつけるわ」
あ………。
否定しなかった篠宮の反応に、またズキンと胸が痛む。
ほらね。こうなるの。
これが現実。
だから私が振り回されちゃいけない。
変わってしまったのは、そんな篠宮の言動に傷つくようになってしまった私の心だけ。
「2人で会ってるの?」
だから私も、何も変わらない振りをする。
むしろ「聞いてやろうじゃない!」
なんて、怒りにも似た感情が込み上げる。
勝手に仲良くやればいいのよ!
篠宮のバーーーカ!!
心の中でぶつくさ悪態をついていると、ビルを眺めていた彼がこっちを向いた。
そしてコテッ首を傾げると、私の顔を覗き込むようにして見つめた後、口角を上げる。
「気になる?」
なっ…!!
ム、ムカつくーーーーっっ!!
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