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篠宮の姿が見えなくなると、また立ち並ぶビルの方に体を向け、柵に肘をついた。
「はぁ……」
頬杖をついたまま、溜息をつく。
どうしてこんな気持ちを抱くようになってしまったんだろう。
篠宮と一緒にいるのは、楽しくて、ネガティブな感情なんてなかったはずなのに。
2人で飲みに行ったり、ファッショニスタに行った時の事を思い出しては、言いようのない感情に胸が苦しくなった。
いつか、あんたが言ったよね。
変わらないものはないって。
聡君の気持ちが変わるのか、江名が変わるのか、私が変わるのか。
そう。
変わってしまったのは、私だけ。
いつの間にか篠宮の存在が近くになりすぎて、少し感覚が麻痺してしまっただけ。
まだ今なら、沼に片足を突っ込んだ程度だから、簡単に抜け出せる。
リスクに飛び込む勇気などないのなら、気持ちをしっかり持たなきゃ。
ビルの窓はキラキラと光が反射して、輝いている。
じっと見ていると目が痛くなって、空へと視線を移した。
私達は、単なる同僚。
それ以上でも、それ以下でもない。
またあの時みたいに、ただ無邪気に笑っていられるだけの関係に戻りたい。
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