崩れる

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「もう少し自分の事を客観的に見て下さいね」 「分かってるよ? もう今はクールで仕事ができる及川より、惨めなアラサーだって笑われてるって」 「ネガティブな感情には敏感なのにね」 バカだねーと言いたげに、呆れた顔をして笑っているのに、その目は何故か優しくて。 目が離せなくて、意図せず見つめ合ったままになると、篠宮から笑顔が消えた。 「お前さぁ……」 いつもとは違うその目に、なんだか熱がこもっているようで、ドキンとしてしまう。 続く言葉を待っているのに、篠宮は珍しく躊躇って、沈黙ができる。 何………? ドキドキ、ハラハラと心臓が2つのまばらな音をたてながら、ものすごい速さでスピードを刻む。 「……何?」 「お前、俺のこ」 「あっれーー?篠宮じゃん!!」 …………………ん?! 2人で振り返ると、そこに立っていたのは須田君!! 「え、及川さん!?? え、何、何、どうして?! え、そういう関係?!」 須田君は目をキョロキョロさせて私達を交互に見ると、両手を口元にあてがい驚きを隠せない様子! ヤバっ! よりによって、歩くスピーカーの異名を持つ須田君に見られちゃうなんて!! 焦って篠宮を見るも、平然としている。 「何してんの、お前」 「あ、俺?俺も飲んでたんだよ! 2階にいたから気づかなかったのかー!」 「へー、誰と?長谷部?」 「違うよ。いやー、噂をすれば篠宮がいたなんて…」 クククと不敵な笑みを浮かべた須田君の視線の先には、こっちへ歩いてくる数人の男女が見える。 そして、その1人を見て凍りつく。 「壱哉君!!」 げ!! 有村さんじゃん!!
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