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「壱哉君」
「何?」
そんな男達の気持ちを知ってか知らずか、有村さんは篠宮に一直線。
「私達、これから別の店に行くんだけど、壱哉君も後から来ない?」
有村さんは篠宮の袖を引っ張って、首をコテッと傾げる。
またザワッと、私の心が揺らぐ。
「そーだよ、篠宮も及川さんも一緒に飲もうぜ!」
須田君にも誘われるけれど、有村さんは私なんて邪魔者だろうし、苦笑いしながら篠宮の方を向いた。
「あー…。まだ仕事の件で及川と話があるから、後で行けるなら連絡するわ」
「ええー、絶対に来てね!」
口を尖らせて懇願する有村さんに対して、イエスともノーとも言わずニコッと笑うと、「じゃあね」と手を振る篠宮。
「フフフ。ごゆっくり」
「さっさと行けよ」
ニヤけた顔を継続中の須田君には、塩対応だった。
騒がしい集団が去った後、残された私達は嘘みたいに静かになる。
「偶然だったね」
「あぁ」
ただ、楽しいだけだったのに。
なんだろう、この違和感は。
「どうする?この後、須田達と合流する?」
篠宮が視線を私に落とす。
……嫌。行きたくない。
有村さんと、篠宮のイチャつく姿なんて見たくない。
「私は行かないから、篠宮は行ってきなよ」
こういう煩わしい気持ちになるから、深入りしちゃいけなかったのに。
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