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「あ、そう。じゃあ、後で駅まで送るわ」
篠宮はアッサリそう言って、ワイングラスを手にする。
……当然だけど、行ってしまうんだ。
止める権利なんてないし、篠宮はそういう男だし……。
分かってはいるのに、ズキズキと痛む心を隠して笑う。
「そういえば、何なの?
須田君に言った新ブランドの件って」
「分からん」
「は?」
「お前がさっき言ってたから適当に誤魔化したら、何故か須田が納得したから俺こそ知りたい」
「アハハ、何それ」
こうやって、ただ笑っていられるだけの関係を壊さない道を選ぶんだから。
「……須田君達が来る前って何の話ししてたっけ?」
「あー……なんだっけ。
忘れた」
隣に座る篠宮が、フッと笑う。
今はこんなに近くにいる篠宮が、この時間が終わると他の女の所へ行ってしまう。
そう考えただけで、胸が痛くてたまらなくて、紛らわすようにワインを飲んだ。
もう、篠宮とは会わないようにしよう。
必要以上に関わらなければ、こんな気持ちを抱える事なんてない。
見なければ、知らなければ、傷つかない。
やっぱり、流されちゃいけなかった。
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