崩れる

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ドッドッと、低音で鳴り響く心臓の音。 篠宮の表情は変わらなくて、どう思っているのか読めない。 「…別にいーけど」 ボソッと篠宮が呟いた。 私達の間に、いつもとは違う空気が流れる。 「ホテル行く?」とか「襲うかもよ?」とか、冗談を言わないのは意味が分かってるからだよね。 私達は何も知らない、純粋無垢な子供なんかじゃない。 水面下には、色んな感情が渦巻いてる。 「…じゃあ、行こうか」 笑ってみせたけれど、緊張で顔が引きつっていたのが自分でよく分かった。 微妙な距離感で駅を歩いて、電車に乗って。 ほとんど話をしない篠宮が何を考えているのか分からなくて、私は間違ってしまったのだろうかと不安だけが募る。 息が詰まりそうな夜に迷い込んでしまった私達。 マンションに着くと、動揺からバッグの底に鍵を落としてしまった。 「あれ?鍵、どこ行ったっけ…」 ガサゴソと焦りながら探して、やっと取り出すと、鍵を持つ手が少し震えていた。 ──この扉を開けたら、私達はどうなってしまうのだろう。 ごくりと息を呑んで、玄関の扉を開けた。
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